フランク ミュラー-「時には限りがない。何とかして時を手に入れようとすることが、この素晴らしい世界を創り上げている」
1992年、希代の天才時計師フランク ミュラースーパーコピー 代引きと共同経営者であるヴァルタン シルマケスがブランド“フランク ミュラー”を起こしてから、25年という節目を迎えた。今日、スイス高級機械式時計を代表するブランドとして世界中にその名が知れ渡る“フランク ミュラー”。25年という短期間での成長、さらにはフランク ミュラーという時計師が今この現在も実在する人物であることを知る人は、どれだけいるだろうか。その核となるすべての名声の基盤には、目を見張るほど数多くの先人のレガシーがある。IT分野が台頭する現代にアナログで、しかも高級な機械仕掛けと大胆なアイデアの数々により疾風のごとく人々を魅了してきた。その影響力こそ、“時”という人類にとっての永遠のテーマに、時計という形をした無形価値に宿る作品に込めた哲学が普遍的な深遠まで到達していた何よりの証であろう。
彼は1958年、時計産業で有名なスイスのラ・ショード・フォンに生まれた。時計とその仕組みに心を奪われた彼は、幼い頃から時計づくりに目覚め、ジュネーブ時計学校では、3年間で履修するべき単位をわずか1年間で修得し、最高賞を含め数々の優秀賞を授与され、卒業と同時に著名なコレクターやミュージアムなどから、希少な時計の修理を依頼されるようになったのがキャリアの始まりだ。1983年には、それまでポケット・ウォッチだけに搭載されていた数々の複雑機構を腕時計に搭載するという夢のようなコンセプトを描き、以来、トゥールビヨンを始めとする30本以上もの世界初の超複雑腕時計ばかりか、数多くの新案特許を生み出し続けてきたのだ。そして満を持して1992年、自らのブランド、『FRANCK MULLER WATCHLAND』を設立し、一人でも多くの時計愛好家が、自身の時計作品を身につけることができるよう、今日へ続く第一歩を踏み出したのだ。
『FRANCK MULLER WATCHLAND』の誕生よって、生み出される複雑で洒脱な逸品の数々も、彼の豊かな才能を前には、まだまだ、小さな成果に過ぎないかもしれない。厳格なスイス人の父から精密機械への拘りを学び、陽気なイタリア人の母から美しいものを愛でる感覚を授けられたフランク ミュラーは、つねに“自分に相応しい時間”の創造へ向け、想像を遥かに超えた情熱を注ぎ続けている。フランク ミュラーの発明となる独自のコンプリケーション・ムーブメントの心臓部は、着想、設計、そして開発までの全てのプロセスが自社の工房で行われ、紙に絵を描くのと同じように、時計に“時”を描き、そして、いくつもの違うテーマの時間を作り出す。結果、フランク ミュラーの腕時計は、高級機械式腕時計の存在定義に変革をもたらし、時間や技量の対価を超越した作家活動が、ブランドの成長を幾何級数的な変革をもたらしたともいえるだろう。
そんなフランク ミュラーが発表した今年の新作は、まずは何と言っても25周年を記念するモデル、「トノウ カーベックス™ 25周年アニバーサリー」だ。フランク ミュラーの名を世界に知らしめ、同ブランドのアイコンの一つともなっている流麗な三次元曲線を描くトノウ カーベックスは、フランク ミュラーが若き独立時計師の頃、コレクターからフランク ミュラーらしさを映し出す作品を作ってほしいというリクエストに応える形で誕生したものだ。今回の新作モデルは、アイコンであるビザン数字をケースに施してセラミックをコーティングし、クラシックで華やかなデザインに仕上げている。しっかりと発表当初のコンセプトである20世紀のアールデコ様式を蘇らせながら、アヴァンギャルドな文字盤と6時位置に25周年のロゴを取り付けたことで、よりいっそう個性的な表情を際立たせており、このモデル一つで同ブランドの進化の足跡を感じることができるものに仕上がっている。
また、近年の中心的なコレクションとなっている「ヴァンガード」からは、これもまたフランク ミュラーらしい様々なモデルが発表されたがその中から注目したいモデルを2つ、ご紹介する。1つ目は、既に進化の窮みに到達したかと思われたヴァンガード グラビティが限界を突破し、更なる進化を遂げた「ヴァンガード グラビティ スケルトン」だ。もとより、ヴァンガード グラビティは、これまでのトゥールビヨンのシステムの設計とは大きく異なり、革新的で奇抜なアイデアによって開発されており、従来のトゥールビヨンシステムより、姿勢差から生まれる重力の誤差をより多く平均化しキャンセルする。いわば、重力を“無かった事にする”という着想だ。従来の装飾を否定し、時計の顔である文字盤はおろか、ムーブメント自体の地板を極限まで削り、必要最小限の骨組みだけを残すことに挑戦している。
トゥールビヨンという極めて繊細なコンプリケーションウォッチでありながら、シンプルな機能美然としたインダストリアルデザイン(工業意匠)という、相反する矛盾を抱えた複雑時計を完成させる事は、作り手にとっては最も過酷な作業である事は想像に容易いところです。しかし、そこに現れた最終的なその構造体には、最早これ以上、抜き差しならない程、均衡した造形美を堪能できる。「GRAVITY=重力」というテーマの時計を、さまざまな角度から突詰めた最終形態というにふさわしいモデルとなっている。
フランク ミュラーは「時計」の枠に囚われることなく、「時」という空間をテーマに、フランク ミュラー独自の視点と美学から成るインスピレーション常にモデルに投影し続けてきた。創業当初に発表されたモデルでさえ、現在でも充分に最高レベルの審美眼を持つ人々の間でも心をとらえて離さない彼の創造性は、今はどの未来を見据えているのだろうか。冒頭の彼自身の言葉が象徴するように、無限の可能性の中から我々では想像もつかないアイデアがまだまだ詰まっているであろうことを推察するに、25年という時間さえ、フランク ミュラーにとってはただの通過点でしかないのかもしれない。